南太平洋の小さな島の傍で、戦時中、金銀宝石をどっさりと積んだ「やまと丸」が沈没した。船長は船と同僚を見捨てた卑怯者と汚ない噂を流された。そして-。船長の息子山本七八は父の汚名を晴らすべく、海底に沈んだ「やまと丸」引揚げプランを思いつき仲間を集め始めた。売…
基地の町・万摺(まんずり)の姐さんたちは、もう30年もパンパンをやっている。お国のためといわれてこの町に流れてきたのだが、世間はそんなことをもう忘れているのに、姐さんたちはそれを怨むでもなく、町をつくり、守ってきた。でも、ベトナム戦争が終り、ヤンキーが去…
猿の本能と人間の欲望が激しくぶつかりあう!餌を求めて神経を研ぎ澄ませ、知恵をしぼり、生きる山猿たち。人は金儲けのために、そんな猿たちを利用しようとする。天然記念物指定、高速道路建設など人間の欲が露わになれば、猿の住む環境は厳しくなっていく。果たして、人と猿が共に幸せに生きる道はあるのか。ボス猿・雷電率いる猿の仲間たちは、どうやって狡猾な人間に対峙するのか。生存を賭けた猿の知略が勝るのか。野生動物の
超一流の流行作家だった藤原審爾が放った動物小説集。読み応え十分の中編が4作品。狼が主人公で傑作との評価される「狼よ、はなやかに翔べ」、サーカスの目玉だった黒豹を描いた「黒豹よ、魔神のごとく襲え」、熊の哀しみと人間の無慈悲な凶悪ぶりを対比が見事な「赤い人喰熊」、そして、飼い犬として可愛がられた犬たちが野生化し、野犬となり、人間たちの憎悪の対象となっていく様に迫った「山犬たちが吠える雪夜」。評論家の中
東京・新宿にある警察署を舞台に、燃えるような情熱をもった刑事たち 聞込みは、運が左右する。不意に思いがけないことをきかれて、すらすら思い出せるものではない。それに、なにか大事な目撃をした者が、聞込みの時に居合せなければ、それきりである。それに喋るほうは無…
あこがれと希望をもってこの街に集まった若者たちは、いつしか金のために恋をも売り渡していた 女は誰しもそうなのだが、とりわけ美人は美貌を鼻にかけ、それで人生をくるわせてしまう。彼女も、正にそういう一人で、美貌を武器に、この新宿の盛り場のキャバレーのマダムに…
夢破れた若者の葛藤……そして彼らを餌にしようと犯罪組織が手を伸ばす 特捜本部が設けられ、殺しの事件のベテランたちが、必死の活動を続けたからといって、ホシがあげられるとはかぎらない。とりわけこの種の偶発的な事件には、怨恨とか痴情とか金銭利害といった明確な特徴…
鬼のように厳しく犯罪者に対する刑事にも自分の生活があり、大切な思いがある まったく男らしい奴という定評があり、彼は職務のためには死ななければならないと、覚悟をきめている。三十すぎなのに、まだ独身でいるのも、そのためなのである。それほどの男なのだが、人間に…
都会に生きる者の孤独や貧困に苛まれる人の危うさ、その人間ドラマを描く ストッキングや下着はそれを脱がせる手間からみると、一円にもならない程度の品物で、処分も面倒なのである。まともな物盗りなら、そんなものを盗って、手懸りをのこしたりしない。つまり盗る以上の…
「新宿芸能社」といえば立派だが、つまりはホステス斡旋、お座敷ストリップの出張サービス業。主人の金沢とうさんと竜子かあさんは無類のお人好しで面倒見がよいが、竜子かあさんは少々短気で早とちり、暴力団とも派手にわたり合うほど気が強い。女たちの身代りに痴漢に抱きついて大怪我をしたり、お座敷の過剰サービスにはらはらしたり……。吹きだまりの人生の哀歓を軽快に綴る名人芸の人情譚!
時として哀れな者、弱者を相手にしなければならない刑事の宿命 子供に罪はないのである。母親をぱくったあと、子供はどうするんだろうなどと思っていると、だんだん根来はしめっぽい気分になってきた。こういう気持ちは、思いがけない危険を招くおそれがある。それで根来は…
新宿の裏社会でうごめく人物を焦点にした、暗くて重い人間模様 彼は死んだも同然だったのだが、そんな彼を迎え入れてくれる連中がなくはなかった。俗に悪党とよばれる犯罪者たちと暴力と悪事で暮している連中だった。彼はそれで新宿へ舞いもどり、この部屋へ住みつき、彼等…
シャリーと呼ばれるその娘は、少女売春のかすりを取るような顔役だった 一人二人でなく、数人の女の声がする。ほとんど同時に、どっと乱闘がおこったような音が聞えてきた。ちょうど根来が歩いている右側の路地からの騒ぎである。それで根来は、反射的に駈けだし、その路地…
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