訟師とは人びとの訴訟を助けた者たちである。彼らは狡智にたけた悪党とみなされ、清代では職業として訴状を代作しただけで、しばしば死刑一歩手前の重刑が科せられた。しかし実際には、それは中国国家が自ら生み出した鬼子であった。宋代以降、訴訟が多発する健訟社会となったのだが、伝統的な政治思想と訴訟制度そのものが逆に人びとに訟師を必要とさせたからである。また訟師には訟師であることに誇りを持つ者さえいた。訟師の全
1960年代からポストモダンの時代を通じ岩波書店で多彩な出版活動を展開した大塚信一に、同じく編集者だった堀切和雅が問う――脱魔術化され、人間の精神が寄る辺をなくした近代において学問や芸術は何と格闘してきたのか。河合隼雄・中村雄二郎・大江健三郎・山口昌男・宇沢弘文・木田元・磯崎新らとの仕事を組織しつつ、何を理解しようとしてきたのか。近代の思考もまた新手の魔術だったのではないか。我々はなぜ地球的破局に
清少納言や和泉式部が仮名文学で雅な貴族の世界を描いていた裏には、暴力が支配する武士の世界があった。それは地方だけでなく、都のすぐ近くでも人が殺されるような状態だった。そして、その雅な世界は武士による収奪によって成り立っていたのだ。この凄惨な時代、拡大・縮小を繰り返しながら、源氏と平氏が武士の代表格として確立してゆく。その背景にある、血の入れ替えと相剋の過程を克明に綴る。
「将来の夢」や「本当にやりたいこと」を聞かれたとき、それっぽい答えを言ってやり過ごしたことはないですか? 自分を忘れるほど夢中になれる「なにか」を探すためにスマホを置いて一歩を踏み出そう。 【目次】序章 なぜ衝動は幽霊に似ているのか/第一章 衝動は何ではないか/第二章 衝動とは結局何ものなのか/第三章 どうすれば衝動が見つかるのか/第四章 どのようにして衝動を生活に実装するのか/第五章 衝動にとっ
女帝・称徳天皇に取り立てられ重用された奈良時代の僧侶、道鏡(?~772年)。女帝に取り入って皇位さえうかがった野心家として、長く悪名が根付いているが、本当にそのような人物だったのだろうか。さまざまな伝説を検証し、最新資料を検討すると、道鏡は実際には政治に関与することなく、天皇への仏教指導に終始した人物としての意外な実像が見えてくる。史料の綿密な検討によって、謎が多く、悪評にまみれた時代の寵児の実像
古代から要衝であり続ける大阪を調べまくりました。高低差の激しい地形、産業発展の歴史、ややこしい私鉄事情と沿線ごとの特徴、住民気質、キタやミナミなど街の成り立ちからディープサウスのスポットへ……。話のネタになるウンチクや雑学、古地図や錦絵、古写真も満載しました。「大阪って、こんなところだったんだ」「大阪には、そんな歴史もあるんだ」「大阪は、お笑いと粉もんだけじゃなかったんだ」と驚きもあるはず。歩き回
「頭がいい」とは、IQや記憶力だけでなく、感覚や運動能力、アートと創造性、他者の気持ちがわかる能力なども含まれる。どんな仕組みで良くなるのかを脳科学の観点から解説する。そのような能力を発揮し続けるための力を「脳の持久力」と名付け、そこに深く関係する脳細胞、アストロサイトの働きを紹介し、人間の脳とAIの比較、今求められる知性について著者の考えをまとめる。
昭和11年、プロ野球旗揚げとほぼ同時に二・二六事件が起こり、日本は戦争へとなだれ込む。日中戦争、太平洋戦争、そして終戦。引き分け禁止や日本語化といった影響を被りながらも断続的にリーグ戦を行い、野球界も戦渦に巻き込まれてゆく。特攻に志願する者、病いや飢えで命を落とす者、帰国して活躍する者――人生の数だけ戦争の記憶がある。プロ野球草創期に生きた122名の選手たちの体験談や秘話をもとに、新たな視点で戦争
「主文 被告人を懲役10年に処する」――その根拠を考えてみたことはあるだろうか? 犯罪とは何か、なぜ刑が科されるのか。制裁としての刑罰はどうあるべきか。「刑法学」の考え方を丁寧に解説する。 【目次】第1章 刑法学の世界/第2章 犯罪論の世界/第3章 処遇論の世界/第4章 量刑論の世界/第5章 刑法学の新しい世界/あとがき
ロマンあふれるイメージが強い古生物学だが、その研究現場は苦悩の連続だ。40億年に及ぶ地球環境や生命進化の歴史を明らかにすべく、化石を手がかりにして、今は絶滅してしまった古生物の生態や地球環境の変動の歴史までを紐解こうとするが、バイアスだらけ、わからないことだらけ。化石は過去に地球に生息していた古生物の遺骸や痕跡が地層の中に残されたもの。長い年月を経て変形していることもあるし、化石が完全体であること
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